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全国782大学の学生とつながり、

難民支援を考えようという「P782プロジェクト」

 

「大学生からの提言:シリア危機に対する日本社会の役割」

 

平成28年2月16日

 

外務大臣   岸 田 文 雄 殿

法務大臣   岩 城 光 英 殿

文部科学大臣 馳   浩    殿

P782プロジェクト シリア提言グループ

事務局:〒520-1212 

滋賀県高島市安曇川町西万木1035-8

p782daigaku@gmail.com

www.p782.org/

 

全国782大学の学生とつながり、難民支援を考えようという「P782プロジェクト」

「大学生からの提言:シリア危機に対する日本社会の役割」について

拝啓

私たち「P782プロジェクト」は、難民支援に取り組む学生を中心に、「全国782大学の学生とつながりを広げ、自分(たち)、自分の大学、自分の暮らす地域にできる難民支援を考え、行動を起こそう」と、2014年4月にスタートした取り組みです。「P」は、PeaceやPrayなどの頭文字で、782は全国の大学数を表しております。これまで、東京、名古屋、大阪、京都、福島などで、難民に関する勉強会を立ち上げ、2015年4月25日のネパール大震災以降は、難民の視点から支援を展開すべく、「ネパール支援チャリティ映画上映会」を企画し、全国の約100大学の学生が参加するなどネットワークを広げております。

 

現在シリアから460万人を超える難民が発生し、それによってシリア周辺国における危機的状況や、ヨーロッパが直面する課題、そして地中海における悲劇などが引き起こされています。私たちはこうした状況を鑑みて、2015年9月に開かれた国連総会において、安倍晋三首相が表明されたような、日本政府による多大な経済的貢献の継続や、紛争の根源的な解決への努力を支持いたします。それとともに、多くの国が難民の受入れを表明する中で、国際社会の一員として、より積極的な役割を果たすよう、学生の目線からシリアの人道危機をどう捉えるべきなのか、ということを考えて参りました。

具体的には、14大学22名の学生が、2015年8月26日(水)から28日(金)の3日間、合宿形式の勉強会を開催し、研究者や弁護士、NGO、日本で暮らす難民やシリア人、UNHCR駐日事務所、ジャーナリストなどによる集中講義を受け、日本に求められる役割について議論を重ねてきた次第です。

勉強会では、まさに危機が起こっているシリア周辺国への支援に加え、日本国内においてもシリアの人たちを受入れるべきか、また受入れることができるのか、そして、受入れるとすれば、どのような人たちが対象になり、どの程度の期間受入れるのか、どのようなアクターが参加するのか、そして最も重要な点として、シリアの人たちの心情に配慮した受入れのカタチはどうあるべきか、などについて議論してまいりました。

 

国際社会において、シリア情勢や、シリア周辺国の受入れ能力を上回る難民の流入、中東からヨーロッパに流入する難民の保護が大きな課題となる中、私たち学生の意見を是非この機会に政府と共有させていただきたく、勉強会における議論の結果を以下、報告させていただくともに、私たちの提言をお伝え申し上げる次第です。

敬具

「大学生からの提言:シリア危機に対する日本社会の役割」

 

はじめに

シリアの情勢悪化や周辺国のキャパシティを超えた難民の受入れによる人道危機が、ヨーロッパに向けた大規模な難民移動の引き金となった。ヨーロッパ諸国も対応が揺らぎ、さらに地中海における悲劇を引き起こしている。460万人を超えるシリア難民が、安全を求めて国境を越えている状況において、国連難民高等弁務官は、各国に対してシリア国外に避難をしているシリア難民20万人の再定住への支援を要請した。要請に対して、ドイツ、フランスをはじめとするヨーロッパ各国が受入れ枠の更なる拡大を表明しただけでなく、新たにオーストラリア、ニュージーランド、カナダなどが受入れを表明し、ヨーロッパを中心としていた受入れが、世界規模に広がってきている。あわせて、紛争の終結に向けた国際的な枠組みでの努力を継続することと、これまで以上に国際社会の包括的かつ継続的な支援が必要なことを合宿勉強会を通して学んだ。

 

日本における受入れの状況について

シリアの状況が悪化した2011年の初頭から2015年までの間に、約65名のシリア人が難民申請をしている状況である。また報道によると、2015年12月の段階で、それらの申請者のうち、6名が難民認定を受けている。それ以外の申請者については、いわゆる人道的配慮に基づく在留特別許可が与えられている。その他、留学ビザなどによって、日本に在留を続け、手続き上は就学の目的とされているが、シリアにおける人道危機が理由で帰国できず、日本における在留を延長し続けている人も相当数、存在する。

 

日本においてシリア人が直面する現実と課題

日本によって保護を提供されているシリア人のほとんどが、人道的配慮によって在留を特別に認められている人たちであり、政府が難民に対して行っている日本語研修等の定住支援を受けることができない。

また、日本に在留しているシリア人については、妻子や両親、兄弟をシリアに残しており、悪化する治安状況の中、本国に残る親族を心配する人が多い。

さらに、日本に在留することができているシリア人についても、財政的な問題が増加しており、それらの人たちに対する支援が切実な問題となってきていることを学んだ。

 

提言

2015年11月にフランスで発生したテロ事件などを契機として、シリア難民の受入れについて国際社会は困難に直面している。しかしながら、私たちは、真に保護を必要としている人たちとは立て分けて考え、国際社会の一員として受入れに向き合う必要である、という結論に至り、以下3点の提言を行う。

 

提言1:           現在の第三国定住事業を拡大し、シリア人を対象とする事業を展開する

現在、政府が実施するミャンマー難民を対象とした第三国定住事業の対象を、シリア周辺国のシリア人、とりわけ大学生や大学院生を対象に拡大する。

例えば、ドイツでは、年間500人の第三国定住枠のうち、200人をシリアに振り分けて対応しており、現在毎年30人の枠で受入れている日本においても第三国定住枠の振り分けや追加を検討する余地があると考える。

また、受入れに際しては、将来のキャリアデザインを踏まえ、学士、修士など学位が取得できる期間の日本での生活が保障されることが不可欠である。大学の奨学金制度、市民社会(企業や財団)なども連携した制度とする(この点、カナダのRYERSON大学が取り組む、Lifeline Syria Challengeを参考にできる。これは、大学や市民社会が連携し、受入れた家族の1年目の生活費を支援するとともに、日常生活の多様なニーズに対応するサポーター制度である。多くの学生を含むボランティアが参加している。なお、生活費は1家族につき、27,000カナダドル=約230万円が見積もられている)

なお、第三国定住については、2010年度からの経験を踏まえ、シリア人コミュニティや、すでに日本で暮らしている難民コミュニティ、地方自治体をはじめとしたホストコミュニティとの十分な連携、交流を充実させることで、異国で暮らしを始める人の心情に配慮した制度設計とすることが不可欠である。

 

提言2:           奨学金プログラムによる大学生および大学院生の受入れ

シリア人学生を対象に、大学による受入れ枠の拡大、政府による留学ビザの発給、奨学金の給付を通じて、日本における在留の機会を提供する。

受入れ対象となる学生についての基準は多様でありえる。(1)日本がシリアの復興に長期的な視点から貢献するために、シリアの復興再建を担う人材や、(2)文化的背景や言語が大きく異なるシリアの人たちを受入れる上で、将来的に日本社会におけるシリア人コミュニティのリーダーとなり得る人物などである。

さらに、すでに日本に在留して就学しているシリア人の中で、資金的な援助を必要としている人に対する就学支援金給付などを検討する必要があると考える。

なお、提言1と同様、受入れに際しては、学位が取得できる期間であることが重要である。

大学のみが受入れの負担をするのではなく、現在、政府が難民事業本部を通じて行っている、第三国定住制度と同様の定住支援を実施する。加えて、現在のシリアの状況を踏まえ、本国への送還をしないなどの難民としての保護が必要であると考える。

なお、奨学金プログラムについては、フランス(シリア奨学金事業・25名)や、ドイツ(シリア・リーダーシッププログラム・100名)の事例を参考にできる。

•フランスでは、各大学とNGOの連携のもと、学費の免除、1年間の奨学金、生活費の支給及び、住居支援、大学によるオリエンテーション、フランス語入門講座の開講、NGOによる難民申請時の法的側面の支援、年間964時間(月約80時間、週20時間)の就労許可などがパッケージ化されている。

•ドイツの「シリア・リーダーシッププログラム」は、ドイツ政府の780万ユーロの費用負担により、ドイツ学校交流会(DAAD)がイニシアチブをとり、2年間有効な学生ビザの発給(国情に考慮した対応がとられる見通し)と、渡航費用の負担、保険への加入、住居支援を実施するなど、受入れ、教育機会の確保、生活支援がパッケージ化されている。

 

提言3:           難民申請をしたシリア人に対する保護の提供と紛争解決への努力

現在のシリアの状況を鑑みれば、難民申請をしたシリア人に対し、国際的な水準に則った難民認定や、それに準ずる保護を求める。

また、たとえ人道的配慮によって在留許可となった場合でも、日本政府が難民に対して、難民事業本部を通じて行っている定住支援(日本に関するオリエンテーション、日本語研修、職業斡旋など)を提供する。必要に応じて、アラビア語などの外国語学科を持つ大学などの教育機関と連携をし、継続的な定住支援を提供することを検討する。

また、難民が発生する根本原因であるシリアの紛争解決に向けた努力を今後も継続、強化することを求める。

 

今後のP782プロジェクト活動計画

今後、自分たちの所属する大学にも奨学金の整備など、受入れに向けた要望を進めるとともに、自分たち自身も汗をかき、チューターグループとしての活動など、受入れたシリアの留学生とコミュニティをつなぐ役割を果たしていきたいと考える。加えて、市民社会におけるシリアへの理解促進とシリアとの交流を目的として、「自分にとって一番大切な言葉」をアラビア語で届ける”Share My Heart Action”を進める。

以上

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